既製杭とは、あらかじめ工場で製作されたコンクリートや鋼管製の杭を現場で打設する方法です。使用されるコンクリート杭は一般的に、PHC杭を用います。主な工法は打込み工法と埋め込み工法がありますが、打ち込み工法はハンマの打撃力により既製杭を地中に打込むもので、騒音・振動が発生するため使用頻度が減少してきています。現在は埋め込み工法が主流になってきており、その中でも「プレボーリング工法」「中堀り工法」があります。また、プレボーリング工法は工法の進歩により設計耐力も大きく取れるため、施工頻度が増加してきています。なお、鋼管杭では「鋼管杭回転圧入工法」が主流です。
プレボーリング工法とは、地盤をオーガー等であらかじめ所定の深さまで掘削し、既製杭を挿入する工法です。プレボーリング工法の中には、「プレボーリング根固め工法」と「プレボーリング拡大根固め工法」があります。プレボーリング根固め工法による一般的工法としてセメントミルク工法があります。セメントミルク工法はスパイラルオーガと先端ビットにより掘削液を注入しながら地盤を掘削し、所定の深度に達したら根固め液に切り替えて支持層の土砂を掘削、攪拌します。その後スパイラルオーガを引き上げながら杭周固定液を注入し既製杭を挿入する工法です。プレボーリング拡大根固め工法は、杭孔の底部で杭径よりも広く掘削した空間を作ってセメントミルクを充てんして杭先端部を広げることで支持力を向上させる工法です。
プレボーリング工法は、施工性が良いため、振動や騒音などの問題が少ないことが特徴です。
中堀り工法とは、杭の中空部にスパイラルオーガ―等を通し、杭先端から地盤を掘削しながら、杭を打設する工法です。杭の打設と地盤の掘削を同時に行い、孔壁保護をする必要もありません。中間層(支持層までの層)のN値が小さい場合、または埋土層等の崩壊が懸念される土質に適している工法です。
ただし、本体機の他に相判機が必要のため施工スペースが必要です。
鋼管杭回転圧入工法とは、掘削力の高い先端翼を取り付けた支持杭を、回転させながら支持層まで貫入させる工法です。国土交通大臣認定杭をはじめ、様々な形状の鋼管杭を地盤の状況に合わせ選定し使用します。
特徴として、低コストで無騒音、無振動、無排土で環境に優しく、幅広い杭径に対応可能です。また、逆回転により引き抜くことができるため、建て替え時の撤去が容易です。
場所打ち杭は、「現場造成杭」ともよばれるもので、地盤の支持層まで掘削した後に、円筒形の鉄筋製のかごを所定の位置に吊り上げて下ろし、コンクリートを打ち固め、その場で杭を造成していくという工法です。既製杭では実現できない太径のサイズや支持層が深い場合などにも対応できます。もっとも一般的な工法は「アースドリル工法」「オールケーシング工法」です。
アースドリル工法は、アースドリル機を使用しドリリングバケットを回転させながら地盤を掘削して、バケット内部に収納された土砂を地上に排出しながら掘削をおこなっていきます。孔壁は表層部ではケーシングを使用し、 それより深い部分は安定液(ベントナイト)で保護します。孔の掘削完了後は、所定の形状に製作された鉄筋製のかごを吊り上げてから下ろし、その中にトレミー管でコンクリートを打ち固めていくことによって、コンクリート製の杭をつくります。
アースドリル工法は杭底部を拡大掘削でき、機械装置が比較的簡易で、施工のスピードも速いことが特徴です。
オールケーシング工法は、ケーシングチューブという筒型の機材を地中に回転圧入し、孔壁の保護をしながらハンマーグラブにて掘削と土砂の排土を行い、できた孔にコンクリートを打ち込みながらケーシングチューブとトレミー管を引き抜いていく工法です。全周回転機を使用する「全周回転オールケーシング工法」やマルチドリル掘削機を使用する「マルチドリルオールケーシング工法」などがあります。オールケーシング工法は全長にケーシングを使用するので、孔壁崩壊の心配がありません。また斜杭の施工も可能なのが特徴です。